脊椎麻酔=腰椎麻酔=脊髄くも膜下麻酔=脊髄麻酔=下半身麻酔
のりのり麻酔科医です。
いわゆる「下半身麻酔」は腹部から下肢の手術で行われますが、呼び方がたくさんあって混乱を招いている気がします。
日本麻酔科学会の最新の「麻酔科学用語集第4版」にはspinal anesthesia「脊髄くも膜下麻酔」「脊麻」と書いてあり、厚生労働省が作成する診療報酬点数表には「脊椎麻酔」と書いてあるので、「脊髄くも膜下麻酔(せきずいくもまくかますい)」「脊麻(せきま)」が日本では正式名称といえます。
日本の文献上では、その名称は脊髄麻酔→脊椎麻酔→脊髄くも膜下麻酔と変化してきました。
脊髄くも膜下麻酔は英語で「spinal anesthesia」といい、
spinalを日本語に訳すと「脊髄の」「脊柱の」という意味になるので、「脊髄麻酔」「脊椎麻酔」となったんですね。
しかし、直訳の日本語では「脊髄を刺しちゃうの?」「骨に刺しちゃうの?」と、イメージしずらく実際に薬液を注入するのは脊髄くも膜下腔なので、最近になってその名称も「脊髄くも膜下麻酔」というふうにしたようです。
また、髄液を採取するのに腰椎穿刺 lumber punctureという手技があるんですが、このまさに髄液がでてきたところに局所麻酔をいれるのが脊髄くも膜下麻酔でもあるので、麻酔科学用語集にもlumber puncture 腰椎穿刺 腰部脊髄くも膜下穿刺(麻酔)とも書いてあります。
そして、「下半身麻酔」という言葉は正式な医学用語ではなく、誰にでもわかるように表現された言葉だと思われます。
以上の理由で脊椎麻酔=腰椎麻酔=脊髄くも膜下麻酔=脊髄麻酔=下半身麻酔という風に、同じ麻酔なのにいろんな名称が混在しているんです。
脊髄くも膜下麻酔で手術が予定されている方がインターネットで検索されることもあると思うので、参考になれば幸いです。
ちなみに、麻酔科医によっては脊髄くも膜下麻酔をspinal anesthesiaのはじめをとって「スパイナル」といったりlumber punctureのはじめをとって「ルンバール」と言ったりするので、麻酔科をローテーションする研修医の先生にとっても混乱ポイントのようです。
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