術後のシバリング
のりのり麻酔科医です。
手術を受けた事のある方は分かるかもしれませんが、手術直後にガタガタ、ブルブル(以下ガタブル)することがあります。
これを専門用語でシバリング(shivering)といいます。
インフルエンザや風邪などで高熱がでるときに、「ガタブル」したことはありませんか?
ちょうどそれと同じ事なんです。
手術を受けた事のある患者さんに、「以前の手術で辛い事はありましたか?」と聞くと、たまにこのシバリングが「寒くて寒くてキツかった!!」という方がいるんですよね(汗)
なので、この記事では「シバリングの原因」と「麻酔科としての言い訳」を書こうと思います。
まず、この「ガタブル」を理解するためには、まず通常の人間の体温調節のしくみを理解しなくてはいけません。
人間の体温調節は、エアコンの温度調節に似ています。
エアコンは設定温度がありますよね?
人間も同じように体温の「設定温度」があるんです。
この「設定温度」のことを、「セットポイント」と言ったり、実際は特定の温度ではなく設定温度には「幅」があることから、今は「閾値間域(いきちかんいき)」なんて呼ばれます。
体内では、「設定温度」より体温が上回ったときは、体温を下げる反応が働き、「設定温度」より体温が下回ったときは、体温を上げる反応が働きます。
体温を下げる反応には、「血管を拡張して熱を放散する反応」や「発汗して熱を逃がす反応」があり、体温を上げる反応には、「血管を収縮させて熱を逃がさないようにする反応」や「熱産生をうながす物質が活性化される反応」、「筋肉が律動的に収縮する事で熱を産生させる=シバリング=ガタブル」という反応があるわけです。
したがって、術後に起きるガタブル=シバリングというのは、体内に入り込んだ病原体をやっつけるために発熱するという、「風邪」のときと同様のしくみで、手術の侵襲で生じた炎症物質のせいで体温の「設定温度」があがって起きるものなんです。
現在の体温が37.5℃で十分暖かくても、手術の侵襲によって「設定温度」が38.5℃に上昇していると、体が設定温度まであげようとして勝手に「ガタブル」しちゃうわけです。
決してボクたち麻酔科医が仕事をおろそかにして手術中に体温が下がってしまった結果、術後にガタブルしちゃうってわけじゃないんですよ!!(泣)
ボクたち麻酔科医はなんとかシバリングが起きないようにしたいんです。
なぜなら、シバリングが起きると寒く感じたり、ガタブルしちゃうって事以外にも悪い事があるからです。
それは、筋肉を動かすのに酸素を使うので酸素消費量が増えたり、交感神経が刺激されることで心拍数や血圧が上昇して心筋酸素需給バランスがくずれて、虚血性心疾患や重篤な不整脈にいたる可能性があることです。・・・まあ、普通は大丈夫なんですが。
なので、麻酔科としては体温を維持すること以外にも薬物によるシバリング予防もしているんです。
それでも起きちゃう「ガタブル」に関しては、はっきりいって・・・ごめんなさい!!というより他はありません(泣)
シバリングゼロの日が来るように日々奮闘しています。
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ありがとうございました~!!
※この記事は2013.2.26に旧ブログ「のりのり麻酔科医のブログ」に掲載されたものを一部改編したものです。
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