「酒飲みは麻酔が効きずらい」は本当か?
のりのり麻酔科医です。
「酒飲みは麻酔が効きずらい」という噂を聞いた事がありますか?
ボクもたまに術前の診察で「お酒を結構飲むんですけど、麻酔が効きずらいってことはありますか?」と聞かれるんです。
麻酔が効かないんじゃあ、キツくて手術受けられないですからね。
インターネット上でも同様の質問が多数出ているので、不安な人がたくさんいるようです。
そして、お酒をたくさん飲んでいる人も多いってことですね(笑)
では、この噂は本当なのでしょうか?
結論からいうと、「酒飲みでも麻酔はちゃ~んと効くので大丈夫です!!」
じゃあこれ、都市伝説なの?!といわれるとそんなこともなくて、
たしかに、長期の飲酒習慣は、全身麻酔で使用する「鎮静剤(眠る薬)」や「鎮痛剤(痛み止め)」の必要量を増やす事が知られており、
局所麻酔でも、長期の飲酒が局所麻酔薬に対して耐性を形成する(効きが悪くなる)可能性が示唆されています。(Anesth Analg. 1990 May;70(5):489-92.)
しかし!!もともと麻酔薬の効き方には「個人差」があり、
飛び抜けて「麻酔が効かない!!」なんてことはないです。
現代は超いいお薬が、たくさーんありますからね♪
「21世紀に生きててよかった~!!」って感じです。
それでも、「いままでに局所麻酔が効きづらかったことがある!!」という人は、
(1)局所麻酔に対して手術の侵襲が強かった
(2)手術部位の炎症が強かった
(3)局所麻酔が届かない部位に手術が及んだ
(4)元々痛みの閾値が低い(ざっくり言うと痛がり・・・♪)
などの可能性があります。
麻酔科医が担当する場合、もし鎮痛が不十分であれば適切に対処するので、あまり心配しないでください。
それでも「おれ・・・すごいたくさんお酒飲むから、麻酔が効くか心配なんだよな~」という大酒飲みのかたは、
むしろ、「お酒の飲み過ぎ」の方が体に悪いですから、そちらを心配してくださいね~!!(笑)
※ちなみに、飲んだばかりで血中アルコール濃度が高いときや、アルコール性肝硬変・肝障害などで低アルブミン血症や肝機能が低下していると、むしろ全身麻酔の必要量が減少したり、麻酔が遷延する(切れるまでに時間がかかる)可能性もあります。
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ありがとうございました~!!
※この記事は2012.11.26に旧ブログ「のりのり麻酔科医のブログ」に掲載されたものを一部改編したものです。
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